このページをご覧になっている方は、現在の仕事が自分に合わないと感じて、独立・起業を検討されている方が多いことと思います。
「上司や先輩の顔色を気にせず、自分のやりたいように仕事がしたい」
「けれど、自分は起業ができるほど特別な存在じゃない…」
「そもそもネガティブな理由で起業をしてはいけないのでは…?」
このように考えて、思い悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
たしかに、世の中にはキラキラ・ギラギラとした夢や使命感を抱いて起業を目指す方も多くいます。
しかし、この記事でお伝えしたいことは、起業は必ずしも「意識が高い人」や「特別なエリート」だけの選択肢ではないということです。
起業というものは、社会にありふれた、もっと身近で普通なものなのです。
その証拠として、これまでに起業してきた人たちの胸の中には、実はものすごく人間的な本音があったことが意識調査で明らかになっています。
この記事では、そんな「起業にまつわる本音」にスポットライトをあてながら、起業することのメリット・デメリットや安全な起業方法などをご紹介します。
そもそも起業とは
そもそも、「起業」とはいったい何でしょうか。
ここでは起業の定義と、実際のどれだけの起業が行われているのかをご紹介します。
起業、それは新しい事業を起こすこと
まずは「起業」という言葉の定義を確認しておきましょう。
起業とは「新しい事業を起こすこと」です。
労働者として誰かに雇われる働き方ではなく、自分自身が運営していく事業を立ち上げることです。
大別して個人事業主として起業するケースと会社設立して起業するケースがありますが、そのどちらも「起業」と呼ばれています。
似たような言葉に「開業」があります。
「開業」は「起業」よりも個人事業のニュアンスが強く、実際に個人事業主として起業する際に税務署に提出する書類は「開業届」と呼ばれています。
とはいえ、どちらも「新しい事業を起こすこと」に変わりはありません。
この記事では統一して「起業」と表記していきます。
毎年20万件以上の起業が行われている
それでは、実際にどれほどの起業が行われているのでしょうか。
東京商工リサーチの調査*1によると、2021年に設立された法人はなんと14万4,622社もあるそうです。
またNTTタウンページのデータ*2では、2021年の個人事業主の開業件数は51,539件となっています。
つまり個人・法人をあわせると、毎年20万件前後の起業が行われていることになります。
当然、その背後には20万人か、もしくはそれ以上の「起業を決意した人」がいるわけです。
ちなみに、日本の大学卒業者数が毎年60万人程と言われています。
少し大雑把な比較かもしれませんが、日本では毎年60万人の新社会人が登場し、20万人が起業していると考えれば、起業件数の多さに驚くのではないでしょうか。
起業というものがいかにありふれた、身近で普通なものなのかが実感できますよね。
起業を目指す理由と本音
さて、一体なぜ20万人以上もの人々が起業を目指しているのでしょうか。
「自分の能力でどこまでできるか、限界に挑みたい!」
「ベンチャービジネスを立ち上げて社会に貢献したい!」
「多額の投資をして一気に事業規模を拡大したい!」
このようなキラキラとした「意識高い系」の起業家ばかりなのかというと、そうでもないのです。
日本政策金融公庫が行った「2021年度起業と起業意識に関する調査」*3によると、とても興味深い傾向が見えてきます。
ひとつひとつ掘り下げてみましょう。
起業家の大半は自由を求めて起業している
まず、起業家の起業動機についてのデータを見てみましょう。
下の表は、起業家が起業をした動機についての調査結果です。(複数回答可)
動機 | 回答率 |
---|---|
自由に仕事がしたかった | 61.1% |
収入を増やしたかった | 39.6% |
仕事の経験・知識や資格を生かしたかった | 24.8% |
自分の技術やアイデアを試したかった | 18.7% |
事業経営という仕事に興味があった | 13.7% |
時間や気持ちにゆとりが欲しかった | 12.8% |
個人の生活を優先したかった | 9.8% |
社会の役に立つ仕事がしたかった | 8.8% |
なんと6割以上の起業家が「自由に仕事がしたかった」のが起業の動機だと回答しています。
他にも、「時間や気持ちにゆとりが欲しかった」「個人の生活を優先したかった」などの動機をあげている起業家もいるようです。
このデータを見ると、起業家の大半が自由を求めて起業したことがわかりますね。
起業 = “意識高い系” は間違い
先ほどのデータを見ると、2番目に選択された動機は「収入を増やしたかった」で4割程です。
「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」や「自分の技術やアイデアを試したかった」といった “意識高い系”な回答は、それぞれ3割と2割ほどの起業家しか選択していません。
それどころか、「社会の役に立つ仕事がしたかった」は「個人の生活を優先したかった」よりも少なく、起業家のわずか9%にも満たない水準なのです。
このデータをみてどのように感じますでしょうか。起業といえば、社会への使命感や向上心に燃える”意識が高い人たち”だけのものだと思っていませんでしたか。
もちろん彼らも起業の主力選手であることは間違いありませんが、それだけが起業の全てではありません。
起業家たちの本音の声に耳を傾けると、起業とはもっと人間じみた、個人の幸福を追求した結果の行為だということが見えてくるのです。
「会社が嫌だから起業」は何もおかしくない
さて、繰り返しになりますが、起業とは個人が幸福を追求した結果の行為です。
いまの生活より、もっと幸せな生活を実現したいという想いが起業に繋がっているとも言えます。
その形が人によって、「自由」だったり「収入」だったり、あるいは「社会貢献」や「自己実現」などであったりするわけです。
もしあなたが、いま努めている会社があまりにも嫌すぎて、他の選択肢を追い求めている課程で起業について検討しているならば、それは全くおかしいことではありません。
前述したように、自由を求めて起業するのは起業家としてはむしろ多数派なのですから。
起業することのメリット・デメリット
それでは、実際に起業をした場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
こちらも日本政策金融公庫の「2021年度起業と起業意識に関する調査」*3をもとに、起業家の生の声から読み取っていきましょう。
起業することのメリット
まずは起業家が答えた「事業を始めてよかったこと」を見てみましょう。
自由に仕事ができる
6割近い起業家は、「自由に仕事ができた」ことをメリットとして挙げています。
起業をすれば事業の方向性や仕事の進め方は自分のやりたいように決めることができます。
雇用主や上司の気まぐれに振り回される必要はありません。もちろん、クライアントやお客様には振り回されることがあるかもしれませんが、それは会社員でも同じこと。
実際に起業した後の感想として6割の起業家が「自由に仕事ができた」と言っているのは、心強いデータと言えるのではないでしょうか。
事業経営を経験できる
ビジネスを総合的にコントロールする事業経営は、非常にやりがいのある仕事です。
会社員でも出世すれば経験することができるかもしれませんが、それはほんの一握りにすぎません。
しかし、起業をすれば全員が事業経営を経験することになります。そしてなんといっても、この事業経営は上司や雇用主の為ではなく、自分の為にやることができます。
起業家の35%が「事業経営を経験できた」ことをメリットとして挙げているのは、そうした背景があるのかもしれません。
自分の技術やアイデアを試せる
3割近い起業家が「自分の技術やアイデアを試せた」ことをメリットとして挙げています。
会社員という立場では、どうしても会社のビジネスモデルに沿った行動をする必要があります。
どんなに優れた技術やアイデアを持っていても、会社がそれを必要としていなければ活かせる機会は得られません。
しかし自ら起業して事業に組み込めば、自由に自分の技術やアイデアを試すことができます。
広い意味ではこれも「自由に仕事ができる」というメリットのひとつと言えるかもしれません。
起業したことによるデメリット
起業にはメリットがたくさんありますが、デメリットもあります。
続いては、起業家が「事業を行ううえで問題だと感じていること」について見てみましょう。
収入が不安定になりやすい
調査によると、起業家の半分近くが「売り上げを安定的に確保しづらい」と回答しています。
また、「業務に対する対価(代金や報酬)が低い」との回答も3割にのぼります。
会社員であれば毎月安定した給料を貰えますが、自分が事業を経営する立場になるとそうはいきません。
業績が悪化したり赤字になったりすると、経営を立て直すために自分の収入を犠牲にしなければいけない場面もでてくるかもしれません。
また、事業が破綻してしまった場合は多額の負債を抱えるリスクもあります。
自らが保証人となって融資を受けている場合、会社が借金を返せないと自分が返済しなければいけなくなるからです。
病気やケガのリスク
病気やケガのリスクも、起業するデメリットのうちのひとつです。
起業家の約3割が「病気やけがになった場合の対応が難しい」と回答しています。
大きな会社組織であれば、従業員の一人が休んでも他の従業員が仕事を代わることができます。
しかし、小さな会社であるほどそれは難しくなりますし、そもそも経営者本人の代わりはなかなかできません。
いざという時にも事業を回せるように、考えておくことも必要でしょう。
税金や保険などの手続きが面倒
事業を経営するということは、ビジネスだけでなく、そこに付随する様々な手続もクリアしていかなければなりません。
人を雇って色々な業務を任せられるようになれば話は別ですが、一人で起業する場合は、当然すべて自分でやる必要があります。
税理士などに報酬を払ってやってもらうことは可能ですが、安くはない費用がかかります。
2割以上の起業家が「税金や保険などの手続きが面倒である」と回答しており、ビジネス以外の部分に負担を感じていることがわかります。
安全に起業するには
多くのメリットがある一方、デメリットも多い起業。少しでも安全に始めるにはどうしたら良いのでしょうか。
ここでは「自宅で起業をする」という観点で、当サイトがおすすめする4つのパターンをご紹介します。
副業からはじめる
まず第一に、副業からはじめてみることです。
本業の安定収入を得ながら少しずつ自分の事業を立ち上げていくことで、万が一失敗した時にも収入が完全に断たれる心配がありません。
また、事業が軌道に乗るまでの期間にも余裕をもつことができます。
先述の日本政策金融公庫の「2021年度起業と起業意識に関する調査」*3でも、サンプル数では起業家よりもパートタイム起業家の方が5倍ほど多い結果となっています。
起業を目指している人の多くが、副業から始めていることの表れと言えるでしょう。
なお、もしあなたがまだ副業のアイデアを何も持ち合わせていないのでしたら、クラウドソーシングのタスク型案件が副業の一歩を踏み出すうえでちょうど良い選択肢かもしれません。
なぜなら、タスク型案件であれば受注活動のプロセスが省略できるため、思い立った今日のうちに仕事をこなして報酬を受け取ることが可能だからです。
サラリーマンを長くしていると、ついつい検討に長い時間を割いてしまいがちです。しかし、起業や副業ではいくら「検討だけ」をしてもお金にはなりません。
それよりも、まずは「実際に行動して最初の1円を稼ぐ」ことが重要です。
タスク型案件が気になった方は、こちらの記事でも解説していますのでぜひご覧ください。
小規模・自己資金の範疇ではじめる
副業からのスタートと似ていますが、小規模な事業から始めることでリスクを低く抑えるパターンです。
初めから巨額の融資を受けて大規模な事業をスタートした場合、失敗すると取返しのつかない負債を抱えることになりかねません。
たとえ自分が得意とする分野で高い専門性やスキルを持っていたとしても、起業した直後はほとんどの人が事業経営の素人であるはずです。
安全に起業をするためには、事業が軌道にのるまでは自己資金で賄える範疇ではじめる方が無難でしょう。
とはいえ、事業の内容によってはどうしても初期投資が必要な場合もあるかもしれません。
その場合も可能な限り自分で貯蓄した資金を中心にしつつ、親しい人に出資をお願いするなど、安易な銀行融資は避けることを当サイトではおすすめします。
なお、近年では会社設立のハードルは非常に低くなっており、合同会社であれば最低6万円の費用をかければ最短1日で会社を作ることができます。
合同会社の会社設立についてはこちらの記事でも解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
関連する複数事業を並行する
安全に起業するには、売上を安定的に確保する必要があります。
しかし、実際には売上はなかなか安定しません。特に、規模の小さい事業であればあるほど、ロットの少なさや納期のズレから毎月の売り上げにばらつきが出てしまいます。
もしあなたが自宅で起業をして安定した売上を確保したいなら、関連する複数の事業を並行する手法がおすすめです。
複数の事業を行うことでばらつきを分散させ、売上を安定化させる効果が期待できるからです。
とはいえ、事業の組み合わせは何でも良いというわけではありません。ポイントは主に2つあります。
- それぞれ互いに関係する事業であること
- マネタイズの方法が異なること
これは、できるだけ無駄な作業負担を増やさずに、かつ収入の柱を増やすことが目的だからです。
例えば、「ブログで広告収入を得る事業」と「アフィリエイトで報酬を得る事業」の場合、どちらも似た作業で行えるうえに、どちらかが伸びれば他方にも相乗効果が期待できます。更に、マネタイズの方法が異なることでリスクの分散にもなります。
他にも「Youtubeの動画投稿で広告収入を得る事業」と「生配信で投げ銭を得る事業」という組み合わせもあるでしょう。更にそこへ「関連グッズを製作・販売する事業」を加えていくことも可能かもしれません。
このように複数の収入を束ねることで、適度にリスク分散をしながら売上を伸ばすことが可能です。
「会社が嫌だから起業」は本当に何もおかしくない
いかがでしたか。
今回の記事では、「会社が嫌だから」起業を検討していることは何もおかしくないこと、そして安全に起業する3つの方法をご紹介してきました。
当サイト「自宅で起業なび」では、起業をもっと身近なものとして誰でもチャレンジできるように、主に「まずは自宅で起業してみよう」という方を対象にした情報を順次ご提供して参ります。
生涯で一つの仕事や会社に尽くすことが当然という時代はもう過去のものとなりつつあります。
いまや政府も副業・兼業を推奨しているほどです。
皆さんも興味がありましたら是非、副業からの起業を検討してみてはいかがでしょうか。
*1 東京商工リサーチ:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220524_02.html
*2 NTTダウンページ:https://www.ntttp-db.com/post/ranking010
*3 日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kigyouishiki_220126_1.pdf